尖閣諸島の件で思ったこと

 中国では釣魚島という名前で呼ばれている尖閣諸島、九月頭の漁船衝突事件が船長を釈放した後も解決には至っていません。僕が中国に住み始めて一年半にして初めてこちらで体験する日中の政治的衝突です。個人的に思ったことを二、三メモしておきたいと思います。

・尖閣諸島についての認識

 例えば、日本人ですと尖閣諸島のことをよく知らないという人がいるかもしれません。試しに、家族や友人に聞いてみましょう。どの辺りにある島でどのような歴史的経緯を持つ島であるか即答できる人は少ないのではないでしょうか。下手をすると「尖閣諸島って台湾の島じゃないの?」とかいう人が出て来るかもしれません。実は恥ずかしい話、僕自身が尖閣諸島についてはよく知りませんでした。今回、ネットで詳細を調べてようやく詳細を知った次第です。

 事件が発生した折、こちらで僕が中国語を教えて貰っている中国人の先生に「釣魚島は誰のものか」と聞くと「中国のものに決まってるでしょ」という答えが返って来ました。周りの中国人と付き合いがある知人数人に聞いたところ、やはり100%同じ答えが返って来たそうです。現在の国際的なルールを知っているか定かではありませんが、歴史的経緯から当然中国のものであるという認識のようです。

 単純にブレるブレないという点から見ると、日本の方が立場が弱いように思います。

・日本人は交渉下手である

 今回、船長を無条件で釈放したことに非難の声が上がり、改めて外交下手を指摘されていますが、それ以前に日本人は普段から交渉が下手くそなのではないかと思います。

 中国では交渉が生活に密着しています。市場や商店街では基本的に言い値で商売している為、売り手は必ず最初に吹っかけて来ます。最近僕は商店街でリュックサックを買いましたが、最初の値段は160元。それに対してこちらは半額を提示したところ、130元、120元、と値が下がって行き、最後は115元で落ち着きました。また、この前空港に向かう為にタクシーに乗ろうとした時も、相乗り、しかも通常は40元程度で行けるところにも関わらず100元だと吹っ掛けられました。このようなことは生活に限らず仕事の場面でも同じです。たとえ契約書や覚書を交わしていようが、都度確認を取らなければ裏をかかれることもあります。逆にいうと、それだけ交渉する余地があるということです。

 日本だとこのような交渉の場面は極端に減ります。レシートの値札通り、広告の値引き率通り、見積りにしても関東の方ではそれほど値引き交渉が発生しません。空気を読むのを信条とする国民性がそうさせるのかもしれません。

 今回の件に当て嵌めてみますと、中国側が最初に取った対抗措置というのは常識を超える範囲での吹っ掛け、それに乗ってしまった日本はぼったくりバーに引っ掛かった世間知らずというような構図になるのではないかと思います。

 外交の場面でも、普段の生活での交渉の慣れというのは多少影響するのかもしれません。

・思考の枠組が決定的に違う

 日本と中国のネットユーザーがそれぞれ今回の件についてどう思っているのか、両国のニュース系サイトのコメント欄をいろいろ読んでみました。日本人は国際的な取り決め(つまり事件発生水域が日本の領海であること)によって解決策なりを見出そうとしますが、一方中国人は尖閣諸島は中国のものであることは自明の理である、この件に関しては自分のところの海で活動していた日本の方が100%悪いという見方です。仮に日中翻訳掲示板があったとしてお互いに衝突することがあったとしても議論は永久に噛み合うことはないでしょう。

 もし、僕が中国で中国人にこの件で議論しようとすると、それは薮蛇であり、喧嘩になることは必定であるということです。
今回の件で思ったことを客観的に書いてみましたが、中国で生活する日本人としては今後の日中関係が気になるところです。また、それ以上に、拘束されている方々が早く開放されることを切に望みます。

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