刑務官の日常を乾いた文体で描いた小説『夏の流れ』で弱冠23歳にして芥川賞を受賞、その後は短篇小説や自身の趣味であるオフロードバイクや犬を中心としたエッセイなどの作品を精力的に発表し続け、更に近年は作庭を傍らに、主に生きることをテーマとして実験的な手法や日本語を追求した文体を駆使した重厚な長篇小説を世に問うて来た作家の丸山健二氏が、遂にウェブでの活動を開始しました。
<WEB 丸山健二 – 眞人堂>
http://shinjindo.jp/maruyama/index.html
書籍の企画やウェブサイトのブランディングなどを手掛けている眞人堂という会社がプランニングを行ったようですが、驚くべきことにいきなりブログ、ツイッター、電子書籍、インタビュー動画など全方位型のウェブPRを展開しています。日本の著名な作家の方で最初からここまでされる方はいないと思いますし、今後もなかなか出て来ないのではないかと思います。
しかし、僕が以前読んだ氏のエッセイ『まだ見ぬ書き手へ』の中で、宣伝に腐心せずとも作品が良ければクチコミで読者が増える筈である、というようなことが書かれてありましたし、他の作品でもたびたび小説家は本業だけをやっていればいいという趣旨の発言があったので、今回のこのウェブでの露出にはかなり驚きました。多分、他の読者の方も同様に考えられる方は多いのではないでしょうか。
ここで、丸山健二氏をあまりご存知でないという方のために簡単ですが箇条書きで小説を紹介。
・『千日の瑠璃』
千の視点で一つの町と人間の生業が描かれる。本の一ページは一日に相当。
・『見よ、月が後を追う』
語り手がバイク。
・『鉛のバラ』
俳優の高倉健を主役と想定して描かれた小説。
・『日と月と刀』
絵巻物にヒントを得た文体で書かれた時代小説。
前置きにも書きましたが、丸山氏の作品はいずれも日本語を駆使し、作品世界にあった文体を模索し、実験的な手法を取り入れて緊密な小説世界が描かれています。読むのはなかなか一筋縄には行きませんが、読書の醍醐味を味わうことができます。『文豪』と呼ぶに相応しい技量を備えた方であると個人的には思っております。
一読者としてはブログやツイッターで氏の発言が出版を待たずに読めるのはとても嬉しいです。そして、今までに文庫化されていず、入手困難となっている過去の作品も電子書籍で手に入るようになれば更に有り難いです。上記のサイトで販売されている『ときめきに死す』は映画化もされた名作なので、これを機会に皆さん読まれるといいと思います。
今後の氏のウェブでの活動にとても期待しています。
<丸山健二氏の最新エッセイ>
<韓国でもロングセラー。丸山健二、中期の名作>